胸部X線検査
胸部レントゲン検査では肺がんや肺結核、肺炎、心肥大など、胸(肺や心臓など)の病気を調べています。肺に異常な陰影がある場合には、再検査や、(特に喫煙歴のある方やリスクの高い方は)胸部CT検査を行いより詳しく調べる場合があります。
胸部X線検査で異常な陰影に見えていても、胸部CT検査を行って実際には陰影はないと判明する場合もあります。異常があった場合には、放置せず必ず本当に病気があるのか確認して下さい。
胃がんリスク検診(ABC検診)
胃がんリスク検診(ABC検診)は、ヘリコバクター・ピロリIgG 抗体検査でピロリ菌感染の有無を、ペプシノゲン(PG)検査で胃粘膜の萎縮の程度を調べ、その結果を組み合わせて胃がんのリスクが高い人を特定する方法です。特定健診や人間ドックなどで、簡便性や、手軽さから行われることが増えています。
ピロリ菌感染が無く、胃粘膜の萎縮も無い人がA群とされています。ABC検診では、A群に該当される方は、胃がんのリスクが低いとして、精密検査不要といわれています。ただし、重大な問題点として、従来の研究では、規模の小さいものや、短期間しか経過を見ていないものなどがほとんどであり、実際にA群の方が精密検査をせずに経過されて、大丈夫かどうかはわかっていません。現状ではABC検診によって胃がんによる死亡をどのくらい減らせるかについては、はっきりしていないのです。今後ABC検診の有効性を確認されればいいのですが、少なくとも現状では、当院では、胃がん検診をABC検診で行うのは時期尚早と考えています。
またピロリ菌の除菌治療後の方は(元来ABC検診の適応外ですが)、見かけ上A群に判定されることがあります。たしかに除菌治療によりピロリ菌が消失し胃がんの発生リスクは減少していますが、一度進んだ胃粘膜の萎縮は残るため、元々ピロリ菌がいない方に比べると、胃がんの発生頻度が高いことが分かっています。その為、ピロリ菌除菌後も胃がんの発生が見られないかどうか1年に1回の定期的な胃内視鏡検査が重要となってきます。
ピロリ菌に感染はしているが、胃粘膜の萎縮は無い人がB群です。ピロリ菌に感染しているうえに、胃粘膜の萎縮もある人がC群、胃粘膜が完全に萎縮したためにピロリ菌もほとんど棲めなくなって、胃粘膜の萎縮があるのに、ピロリ菌の抗体は陰性となってしまう場合がD群です。D群では 、1年間に1.31%すなわち1000人中の13人が胃がんになる、最も高い危険性が有るグループです
ABC検診にて要精密検査が出た方(B・C・D群)の方は、相対的に胃がんの危険性が高くなりますので、必ず胃の精密検査(内視鏡検査)を受けられるようにしてください。
実際に、ピロリ菌のいるB、C、D群では初めからピロリ菌のいないA群に比べ、胃がんのリスクは10倍以上であることが報告されています。その為、胃がん発生予防のために、特に若年者(〜60歳台)においては除菌治療をおすすめしております。(ピロリ菌の詳細に関しては、「ピロリ菌と胃がん」ご覧ください)
また、現在症状のある方や、以前にヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療を受けた方、食道・胃・十二指腸疾患で治療中の方、胃酸分泌抑制薬(プロトンポンプ阻害薬)服用中もしくは2カ月以内に服用していた方、胃切除をされた方、腎不全の方(目安として、クレアチニン3mg/dL 以上)はこの検診結果では胃がんのリスクを判定できませんので、ABC検診ではなく、他の胃がん検診を強くお勧めいたします。
大腸がん検診(便潜血検査)
大腸がんは、早期発見が出来れば、ほぼ100%治癒が期待できるがんです。しかし、かなり進行するまで自覚症状はなく、無症状の時期に早期発見することが重要です。
現在大腸がん検診では、便潜血検査(2日法)および問診が行われています。便潜血検査は便中の出血の有無をみる検査で、簡便・低コストなこともあり、一般の検診において多く普及しています。便潜血検査陽性の場合、進行した大腸がんに対しての感度は80%程度とされており、便潜血検査陽性になった場合には、必ず大腸の精密検査(大腸内視鏡検査)を受ける様にしてください。(再検査で便潜血検査をするのは非常に危険ですので、必ず内視鏡検査を行うようにしてください)
しかし、問題点として、便潜血検査は、早期の大腸がんや、ポリープに対しては感度が低いことがあげられます。実際に便潜血が陰性でも、内視鏡検査でポリープや早期がんが発見されることが多くあります。
大腸がんの予防法としては2年毎に大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けるようにすることで、いずれの病変も早期発見・治療ができる可能性が高いと考えられております。実際に、当院でも40歳以上の患者様には定期的な内視鏡検査を推奨しております。特にご家族に胃がん・大腸がん・乳がんなどの既往がある方や、以前にポリープを切除した事のある方の場合は便潜血検査ではなく、大腸内視鏡検査を行うことを強くお勧めしたおります。
ただし、便潜血陽性であっても、いわゆる痔による出血の場合もありますので、直ちに悪い病気を心配する必要はありません。まずは気楽にご相談ください。