健康診断で「異常」「再検査」といわれたら
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Q1健康診断の判定にはどういう意味があるの?
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健康診断の判定には、主に「異常なし」、「要経過観察」、「要精密検査」、「要治療」などがあります。それぞれ下記のことを示しています。
異常なし
「異常なし」などと言われた場合には、今回の検査が、正常範囲内だったという意味で、心配はいりません。
要経過観察・要再検査
正常範囲内ではないのですが緊急性はなく、数ヵ月後、もしくは1年後に再度検査を受けてくださいという意味です。更に悪くならない様、出来れば良くなるように生活に気を付けるように心がけて下さい。異常値が出た場合でも、あわてなくて良い結果です。
要精密検査
「要精密検査」は、更に詳しく検査する必要がある場合です。精密検査の結果、異常がないこともあり、病気と決まったわけではありませんが、必ず本当に病気があるのかないのか病院を受診し、検査を受けるようにして下さい。健康診断だけでは、異常や病気の有無をすべて特定することは困難なためです。
「要治療」
「要治療」の場合は、健康診断ですでに治療が必要な異常値が見つかっています。必ず医院・病院を受診され、ご相談ください。
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Q2メタボリックシンドロームってなんでしょうか?
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「メタボリックシンドローム」は、内臓脂肪の過剰な蓄積により、高血圧や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病がいくつか合併していることをいいます。
具体的には、腹囲男性85cm、女性90cm以上で、- 血圧130/85mmHg以上
- 中性脂肪150mg/dL以上またはHDLc40mg/dL未満
- 血糖110mg/dL以上
の3項目中2項目以上が当てはまる状態をいいます。
「メタボリックシンドローム」の状態が続くと全身の血管の動脈硬化が進行してしまい、将来的に脳梗塞や、心筋梗塞を発症するリスクが高まるといわれています。まだ早期の高血圧・糖尿病など単独では治療の必要の無い状態でも、それが2つ3つと複数ある場合は、動脈硬化の予防という意味では、治療が必要な場合があります。指摘を受けた場合は、お気軽にご相談ください。
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Q3血圧が高いと言われました。自宅では120/70くらいですが治療が必要でしょうか?
- たしかに高血圧症を長期間放置していると、全身の血管に動脈硬化が進行し、将来的に脳出血・脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な疾患の原因となります。しかし、1回の血圧測定(特に健康診断で緊張している時)の血圧が、基準値より高かったからといって、すぐに高血圧症とは診断できません。血圧は食事や運動、心理状態などの影響を非常に受けやすいので、血圧測定は出来ればリラックスした状態で行いましょう。もし健康診断で高血圧を指摘された場合は、出来れば自宅で複数回の血圧測定を行い、その結果をご持参の上、受診をお勧めいたします。
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Q4コレステロールが高いといわれました。症状が無いので、放置していても大丈夫でしょうか?
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コレステロールには、一般的に善玉コレステロールと悪玉コレステロールがあります。善玉にはHDLコレステロールがあり、動脈硬化を防ぐ働きをしています。悪玉にはLDLコレステロールと中性脂肪があり、増えると動脈硬化を引き起こします。 動脈硬化は自覚症状が出にくく、また痛みなどの明らかな形で現れたときにはすでに病気が進行してしまっていることが多く見られ、注意が必要です。
コレステロールが高いといわれた場合、悪玉の中でもLDLコレステロールが高いのか?中性脂肪が高いのか?などや、他の生活習慣病(高血圧・糖尿病・喫煙(受動喫煙含む)・慢性腎臓病・早発性冠動脈疾患の家族歴・動脈硬化性疾患の既往・高齢者・男性など)の有無、現在の動脈硬化の程度(頚動脈超音波検査などで測定)によって、治療方針や必要な検査が大きく異なってきます。
自覚症状が無いからと放置されずに、一度受診をして頂き、まずは今の自分の状態を知ることから始めて頂ければと思います
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Q5肝機能障害といわれました。どのような検査が必要でしょうか?
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肝臓は、たんぱく質の合成、糖分や脂肪の貯蔵、胆汁の生成、有害な物質の分解(解毒)など、実にさまざまな働きをする重要な臓器です。通常健康診断では、AST(GOT)、 ALT(GPT)、 γ-GTPなどの血液による肝機能検査を行います。これらは肝臓の細胞の中に存在するタンパクの一種で、肝細胞の中では酵素という働きを担っています。正常では血液中にはわずかな量が存在するだけですが、肝細胞がいろいろな原因で壊されると、これらのタンパク質が流出し、数値が上昇してきます。
日常の診察では代表的な肝機能障害の原因は、アルコール、脂肪肝、薬剤性、ウイルス性(B型、C型)肝炎などです。とくにアルコールの過剰摂取と肥満による脂肪肝は、代表的な肝機能障害で、もし心当たりがある場合は、生活習慣の改善が必要です。しかし、肝機能障害の原因はウイルス性肝炎や他にもあり、専門的な検査や厳重な経過観察が必要な場合も少なくありません。自覚症状が無いからと放置されずに、一度ご相談ください。
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Q6糖尿病の疑いがあるといわれました。どうしたらいいのでしょうか?
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糖尿病は、血液中のブドウ糖=「血糖」が慢性的に高くなる病気です。血糖はすい臓という臓器から分泌される「インスリン」というホルモンで調節されています。そのインスリンが不足したり、その働きが不十分になったりしまった結果、血糖値が高くなります。高血糖は、初期は自覚症状はほとんど無く、数年~十数年かけて様々な合併症を引き起こします。
合併症には動脈硬化を悪化させ、脳梗塞や心筋梗塞を起こすだけでなく、全身の細い血管を障害して、腎機能障害(透析治療が必要になったり)や失明、足指の壊疽を起こしたりします。
糖尿病は初期には全く症状なく進行し、気づいた時には重篤な合併症を引き起こし、生命・生活の質に直結します。糖尿病にはいくつかの種類があり、また程度によっても、治療法が大きく異なりますので、一度受診して頂く必要があります。
もし検診などで異常が指摘された方や、悩んでいることがあれば、お気軽に外来に受診し、ご相談ください。
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Q7貧血といわれました。痛みもないのに内視鏡検査をしたほうが良いといわれたのですが、なぜでしょうか?
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血液の中には、細胞や組織に酸素を運ぶ役割をもつ赤血球があり、その中にヘモグロビンが含まれています。このヘモグロビンが減少していることを貧血といいます。貧血の原因には、ヘモグロビンの材料である鉄分摂取が不足している場合と、慢性的な出血がおきている場合などがあります。
特に女性には、生理に伴う定期的な出血があり、相対的に鉄分不足による貧血が見られることがあります。近年、特に無理なダイエットや偏食などによる若い女性の貧血が増えており注意が必要です。また、貧血の原因として、特に40歳以上の場合には胃潰瘍・胃がんや大腸がん、婦人科系の病気など無視できない病気による慢性的な出血が原因の場合があります。貧血を指摘された場合には、受診の上、必要な検査を受けるようにして下さい。
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Q8尿酸が高いといわれました。なにに気をつければいいのでしょうか?
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血液中の尿酸が増えてくると、関節の中で結晶化し、足の親指の付け根などの関節に「痛風発作」と呼ばれる激しい痛みを起こす場合や、まれに腎不全を起こともあり、注意が必要です。また尿酸値が高い方は、生活習慣病を合併することが多いといわれており、動脈硬化予防の点でも注意が必要です。
対策としてはまずは食事の総カロリー量を減らすことが最も大切です。加えて、尿酸を作る原料となるプリン体を多く含んだ食品は控えることも大事になります。特にビールはプリン体を多く含んでいますが、他のアルコールも肝臓で代謝され尿酸が作られますので、アルコール全般の過剰摂取には注意が必要です。他にも積極的な水分摂取や、適度な運動も効果的です。
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Q9尿検査で異常ありと言われました。再検査は必要でしょうか?
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腎臓は体の中の老廃物を尿として排泄し、必要な物質を再吸収する働きがあります。腎臓に異常をきたすと老廃物が体に蓄積され、逆に糖や蛋白などの体に必要な成分が尿の中に排泄されてしまいます。
尿検査で血尿・蛋白尿・尿糖などが指摘されると、体質性、尿路感染症、尿路結石、腎機能障害、腎炎、糖尿病、腫瘍などの可能性があります。ただし、尿検査異常で本当に病気があるのかどうかは、検査前日や当日の状態により検査結果が変化することがあり、判断できません。再検査や、腹部超音波検査などで、治療が必要な状態でないか確認するようにしてください。
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Q10心電図検査で異常ありといわれました。すぐ病院に行ったほうがいいのでしょうか?
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心電図検査とは、心臓の筋肉が収縮するごとに生じる微量の活動電流の変化を図形に記録し、その働きを調べる検査です。心電図の異常には大きく分けて脈の異常(不整脈)と虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症など)、心臓自体の異常(心筋症・心肥大など)があります。いずれにしても様々な種類があり、なにも治療せず放っておいても良いものも直ぐに治療を始めなければならないものもあります。
精密検査としては、24時間にわたり心電図を記録するホルター心電図や走ったりしながら測定する負荷心電図、心臓の動きを直接見る心臓超音波検査、実際に心臓の血管のつまり具合をみる心臓カテーテル検査や冠動脈CTなどがあります。特に自覚症状(胸痛や息切れなど)がある場合は、早めの受診をお勧めします。
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Q11腫瘍マーカー高値といわれたら?
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体内に腫瘍(がん)ができると、血液や尿中のたんぱくや酵素などが急激に増えることがあり、それを腫瘍マーカーといいます。
腫瘍マーカーは、一般にがんが大きくなれば量が増えますが、早期ではほとんど見られません。また、良性腫瘍や慢性肝障・腎障害、喫煙や呼吸器の慢性炎症、高血糖などでも高値を示す場合があります。しかも腫瘍マーカーが関与する臓器は多種多様で、腫瘍マーカー高値の場合に必要な検査は多岐にわたってしまいます。
例えば、よく使われる腫瘍マーカーのCEAは主に腺癌という種類のがんで上昇し、CEAが上昇するときに考えられるがんの場所には、消化器系(大腸、膵、胆管、食道、胃など)や、婦人科臓器(乳房、子宮など)、呼吸器系(肺、気管支など)があります。そのため、CEA上昇の場合、胸部レントゲン検査、超音波検査、上部消化管内視鏡検査、大腸内視鏡検査、各種CT検査などの検査が必要になってしまいます。また全身の検査を受けても異常なしでも、「もしかしたら」という気持ちを抱えてすごす受診者の方も少なくありません。そのため、現状では健康診断での腫瘍マーカー検査は当院ではお勧めできないと考えています。(ただし例外的に前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAは早期発見に役立ちます)
もともと血液検査による腫瘍マーカーは、進行がんに対する抗がん剤治療後の効果測定やがん再発の目安に用いられるのが通常であり、がんを早期で発見するためのものではありません。自覚症状の出にくい「がん」の代表にあげられる「食道がん」「胃がん」「大腸がん」に関しても、腫瘍マーカー採血では早期に「がん」を見つける事は全く期待できませんし、健康診断でオプションの腫瘍マーカーを付けるぐらいなら、直接観察できる「内視鏡検査」や「超音波検査」など他の検査を追加することをお勧めいたします。
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