逆流性食道炎

逆流性食道炎の定義

逆流性食道炎とは、強い酸性の胃液や胃で消化される途中の食物が、食道に逆流して、食道が炎症を起こし、胸やけや胸の痛みなどさまざまな症状が生じる病気です。逆流性食道炎は、もともと日本人には少ない病気といわれていましたが、食生活の変化などによって、最近訴えられる患者さんが増えています。

逆流性食道炎の症状

逆流性食道炎の症状は非常に多彩です。全く無症状な方もいれば胸焼けやのどの違和感などを自覚される方もいます。代表的には、以下の症状があります。

  1. 1胸やけ:胃液などが食道に逆流して、胸やけや胸が締め付けられるような痛みが生じます。
  2. 2呑酸:酸っぱい液体が口まで上がってきてゲップがでます。
  3. 3口内炎、のどの痛み:逆流した胃液で、のどや口腔内に炎症が起こり、ひどくなると食べ物が飲み込みづらくなったり、声がかれたり、口内炎が多発したりすることもあります。
  4. 4咳・喘息:逆流した胃液がのどや気管支を直接刺激したり、食道を介して刺激が伝わったりし、咳や喘息が起こる場合があると考えられています。
  5. 5その他:何となくの前胸部の違和感・不快感、のどの違和感など非常に多彩な症状を起こすことがあります。

逆流性食道炎の原因

正常な状態では、胃液で食道が傷つかないように、食道と胃の境目にある下部食道括約筋が、逆流しないようにしています。逆流性食道炎は、加齢・食事の内容・肥満・姿勢などによって、食道を逆流から守る仕組みが弱まるか、胃酸が増えすぎることで胃液が逆流するために起こります。

また最近では、一時的な逆流に伴う粘膜の炎症やストレスなどによって、食道の過敏性を異常に高めてしまうこと(知覚過敏)が、逆流性食道炎の症状発生に大きな役割を果たしているとの報告もあります。

逆流性食道炎の検査

逆流性食道炎の診断の方法として大きく二つにわかれます。

一つ目は診断的治療を行う方法です。症状から逆流性食道炎を診断し、胃酸の分泌を抑える薬を内服し、2~4週間後に治療効果をみるという方法です。問題点として、同様の症状を起こす他の病気(胃潰瘍や胃がん、食道がんなど)であった場合でも症状が一時的には改善し、診断が遅くなる場合があります。

そのため当院では基本的に、二つ目の方法である治療前に胃内視鏡検査(胃カメラ)を受けられることを推奨しています。内視鏡検査では写真のように実際に食道の粘膜に傷がつき、びらんを形成しているかどうかがわかります。このように胃内視鏡検査では、症状が実際に逆流性食道炎によるものであることを確認し、さらに重症度を考慮した治療を行うことができます。

正常

 

軽症

 

重症

逆流性食道炎の治療

治療には生活指導、薬物療法、外科的治療があります。

1. 生活指導

食後逆流しにくいように、すぐ横にならないことや、腹圧の上がるような前かがみの姿勢を避けたりすることである程度の予防、治療が可能です。逆流を起こしやすい食品として下記のものがあり、食事の改善などの生活習慣を変えることも重要になります。

【逆流を起こしやすい食品例】
アルコール、コーヒー(特にブラック)、炭酸飲料、たばこ、油もの、甘いもの、酸っぱい食品(梅干し、柑橘類など)、炭水化物(パンなど)

2. 薬物療法

現在では逆流性食道炎の治療は薬物療法が主体です。治療に使用される内服薬は、胃酸の分泌を抑制する薬剤や、胃や食道の食べ物を送り出す運動を亢進させる薬剤、食道・胃の粘膜を保護する薬剤があります。特に、胃酸の分泌を抑制するものは治療効果が高いと報告されています。また、他の薬剤も酸分泌抑制剤と併用することで治療効果が上がることが知られています。現在の重症度・症状や他の疾患などを考慮してご相談しながら処方を決めさせていただきます。

3. 外科的治療

薬物治療の効果が乏しい場合や、食道炎が重症化して、食道が狭くなったり、出血を繰り返したりするような方には、手術により逆流を防止する治療が行われることがあります。ただし侵襲の強い治療法であり、十分な内科的治療が行われた後に検討されます。

逆流性食道炎と食道がんの関係

食道の病気として、近年食道癌も増えています。逆流性食道炎の症状であるつかえ感や違和感などは、食道がんでも認められる症状です。また重症の逆流性食道炎は、食道がんが発生しやすいことも知られています。特に下記に示すような生活習慣を持った方は、食道がんを発症しやすく、特に注意が必要です。
近年では定期的な検診での胃内視鏡検査の普及や、検査機器の進歩によって、食道がんの早期発見例が増え、多くの患者さんで侵襲の少ない内視鏡治療を選択しています。胸やけなどの症状がある方は一度ご相談していただき、胃内視鏡検査を検討していただければと思います。

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