検診などで、食道裂孔ヘルニアと指摘されることもあると思います。
口から食べた食べものは食道を通り、胸とお腹の境にある「横隔膜」を越えて、胃に入っていきます。この「横隔膜」には穴が開いており、この穴を食道裂孔と言います。 食道裂孔ヘルニアとは生まれつきや年齢を重ねることで、食道裂孔を支える筋肉が緩くなり、お腹にあるはずの胃が、胸の部分に飛び出てしまうことを言います。
食道裂孔を支える筋肉がゆるむと、胃と食道の逆流を防止する機能が弱ってしまうため、多くの場合逆流性食道炎を合併しています。ただし無症状の方が多く、治療は必要ない場合がほとんどです。また治療をおこなう場合も、食道裂孔ヘルニアに対する治療ではなく、併存する逆流性食道炎に対する治療がメインになってきます。
診断は、主に胃カメラでされます。また胃カメラの場合、食道裂孔ヘルニアの診断だけでなく、逆流性食道炎の程度や、食道や胃の悪性腫瘍の有無も判断できるため、定期的に受ける必要があります。
成人以降に発症する食道裂孔ヘルニアには多くが症状はなく、無症状であれば治療の必要はありません。症状がある場合も、合併する逆流性食道炎に伴う症状がほとんどです。
逆流性食道炎に対し、生活指導(脂肪分・チョコ・熱いコーヒーなどの制限、食後2時間程度横にならない、コルセットや洋服などでの腹部の過度の圧迫の禁止など)や、薬物治療(胃酸分泌を調整する薬、食道・胃粘膜を保護する薬、消化管の蠕動運動を促す薬など)を併用していきます。 それでも改善しない場合や脱出部分が大きく胸部の臓器を圧迫するような症状がある場合には、必要になる症例は非常に限られますが、外科手術(腹腔鏡手術が一般的になってきています)を行う場合もあります。また、一部の医療機関では胃内視鏡検査での治療も研究が行われているようです。