Q:10年ほど前に十二指腸潰瘍や胃潰瘍になり、ピロリ菌除菌し成功しました。最近胃炎にかかり、胃カメラ検査も問題ないのですが、心配です。ピロリ菌除菌をもう一度すべきでしょうか。
A:ピロリ菌は胃に住んでいる細菌の一つで、日本人全体の約半数が感染しているといわれています。原因は、多くが幼少期に、人から人への経口感染や井戸水から感染していきます。現状では、年齢が上がるにともない、ピロリ菌を有する方は増えていきます。
一度ピロリ菌に感染すると、「慢性胃炎」と呼ばれる持続的な炎症がおき、年齢とともに胃の粘膜の萎縮(荒れ)が次第に進んでいきます。その「慢性胃炎」が何年・何十年と継続すると、胃がんや胃・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫など色々な病気の発生の危険性が高くなるとされています。また胃の粘膜の萎縮(荒れ)により、胃酸の分泌が減り、胃もたれや胃の不快感、胃が膨れて苦しいなどの症状が出る場合もあります
ピロリ菌の除菌は、胃・十二指腸潰瘍や胃がんなどの予防に有効であり、2013年からは胃カメラ検査で診断された「慢性胃炎」にも適応が広がっています。その為、最近では検診などの検査でピロリ菌の感染が診断され、除菌をされる方も増えています。ただし除菌によりピロリ菌が消えても、一度進んだ胃の粘膜の萎縮(荒れ)は残るため、元々ピロリ菌がいない方に比べると、胃がんなどの発生率が高いことが分かっています。また再度ピロリ菌が増えてくること(ピロリ菌の再感染)も年1-2%程度あるとされていて、除菌した後も1年1回の定期的な胃カメラ検査を受けることが大切です。
今回のご質問では、胃炎の発症もあり、ピロリ菌の再感染の可能性は否定できません。ただし「慢性胃炎」は、塩分の摂り過ぎやタバコ、飲酒、食習慣の欧米化でも発生することが言われています。現在、胃カメラ検査で問題がないのであれば、まずはご安心して頂き、今後も定期的な胃カメラ検査を継続して頂くことが、一番大切かと思います。それでも心配な場合は、ピロリ菌の有無は簡単な検査で判定できますので、一度主治医の先生にご相談して頂ければと思います。
プロフィール:北里大学医学部卒業後、慶應義塾大学一般・消化器外科教室に所属。慶應大学病院や平塚市民病院などの基幹病院をへて、現在は厚木胃腸科医院院長。痛くない苦しくない内視鏡検査(胃・大腸)など消化器疾患を中心に幅広く診療している。HPなどでも消化器疾患などの記事・コラムを掲載中。日本消化器内視鏡専門医。HP:https://www.atsugi-ichouka-dc.com/